使いにくいシステムは、本当にシステムのせい? (note制作チーム)

「またシステムが使いにくいって言われた…」

現場からのフィードバックに、思わず肩を落とすことはありませんか?

システム開発や運用に関わる人なら、一度は経験があるはず。「使いにくい」という言葉は、そのまま自分たちの責任のように聞こえてしまい、落ち込んだり、慌てて対処法を探してしまう。

でも、ちょっと待ってください。

その“使いにくさ”は、本当にシステムのせいでしょうか?

実は、業務そのものが変化していたり、当初よりもずっと複雑化しているケースが多いのです。

つまり、原因はシステムではなく、「業務の構造」に潜んでいる可能性があるということ。


今回の記事では、表面的な課題にとらわれず、「本質はどこにあるのか?」を問い直す視点をお届けします。

あなたが抱えるその違和感、もしかしたら“本当の改善”につながるヒントかもしれません。

目次

現場の「不満」が自分に刺さるとき

「このシステム、正直言って使いにくいんですよね…」

その一言に、胸がズキッとする。


現場からのフィードバックは、改善のために必要だと頭ではわかっていても、感情が先に反応してしまう。

まるで自分の設計や導入の仕方を否定されたような気がして、どこか自責の気持ちが湧いてしまう。

「頑張って作ったのに…やっぱり自分が悪かったのかな」

そんなふうに悩むシステム担当者やPMは少なくありません。

むしろ、それだけ現場と真摯に向き合っている証拠です。

だからこそ、「使いにくい」という言葉をそのまま受け取ってしまうと、自分の評価や仕事への自信に影響が出てしまう。

ただ、ここで少し立ち止まって考えてみてほしいのです。
その“使いにくさ”は、本当にあなたの設計や導入のせいなのでしょうか?
問題の本質は、もっと別の場所にあるかもしれません。

というのも、システムが使いにくく感じられる背景には、「業務の変化」という見えづらい要因が潜んでいることが多いのです。

本当に“システム”が原因だったのか?

現場から「使いにくい」と言われたとき、まず疑うのは「操作性」や「UI設計」ではないでしょうか。

確かにそれも大切な要素です。

けれど、実際に問題を掘り下げていくと、それだけでは説明できないケースに多く出会います。

たとえば、こんな状況を思い出してみてください。

  • 当初想定していた業務よりも、関係者や手順が増えている
  • 新しいサービスや部門が増え、同じシステムでより多くのことを処理しなければならなくなった
  • 業務の流れそのものが、導入当時とは大きく変わっている

このような変化がある中で、システムが「複雑に見える」「うまく使えない」となるのは当然のことです。

つまり、「使いにくさ」はシステム単体の問題ではなく、業務そのものの複雑さが原因になっていることが非常に多いのです。

「そもそも業務フローが変わってた。それに合わせて、誰も設計を見直していなかった」

こんなケースもよくありますよね。
それでも、矢面に立つのはシステム。

責任を問われやすいのも、システム。

だからこそ、“表面の声”だけに反応するのではなく、“構造の変化”という背景を丁寧に見ていく必要があります。

見直すべきは「業務」と「目的」

「使いにくい」と言われたとき、私たちはすぐにシステムの改善案を考えがちです。

メニューの配置を変える?

ワンクリックで完結する導線をつくる?

マニュアルを作り直す?——どれも間違ってはいません。

でも、その前にやるべきことがあります。

それは、業務そのものを見直すことです。

そもそも、その業務は「本当に今のままで良いのか?」
その作業は「目的に沿っているのか?」
そう問い直すことこそが、遠回りのようで最も効果的なアプローチなのです。

たとえば、ある企業では新しい部署が増えたことで、請求書処理のフローが倍以上に膨れ上がりました。

当初は2部門だけだったところが、今では5部門が関わるようになり、承認プロセスも複雑化。

それなのに、システム設計は昔のまま。

結果、「使いにくい」という声が上がったのです。

でも、それはシステムの設計が悪いのではなく、業務の設計が変わっていないことに問題があった。
つまり、改善すべきは「画面」ではなく「フロー」だったわけです。

「システムを直すより、業務の目的と流れを一度棚卸しするほうが、ずっと早くスムーズになった」

こんな成功例も少なくありません。
だからこそ、「まず業務ありき」という原点に立ち戻る必要があります。

システムは“手段”でしかない

忘れてはいけない大前提があります。

それは、システムはあくまで業務を遂行するための“手段”であるということです。

しかし、現場に導入された瞬間、システムは「目的化」してしまいがちです。
システムを使うこと自体がゴールになり、うまく使いこなせないと「ダメな現場」とされてしまう。これでは本末転倒です。

「このツールを使いこなせていないのは、現場の理解が足りないせいだ」
そんな空気があるとしたら、それはとても危険な兆候です。

本来、システムとは現場が目指す「理想の業務」を支えるために存在するもの。
であれば、先にあるべきは「どういう業務をどういう形でまわしたいか?」という業務の構想や目的の明確化です。そこが明確になっていなければ、どんなに洗練されたシステムでも「使いにくい」と言われてしまいます。

たとえば、「誰がどの段階で何を判断するのか」「例外対応はどうするのか」「情報の流れはどうなっているのか」——そういった業務の設計図がないままでは、システムがうまく機能することはありません。

言い換えれば、システムは業務の鏡
業務が乱れていれば、システムも乱れて見える。それは当然のことです。

本質に向き合うことが、信頼につながる

「システムが使いにくい」と言われたとき、
そこに込められた本当のメッセージに耳を傾けられるかどうか。
それは、システム担当者にとってとても重要な資質だと思います。

というのも、現場の声の奥には、言葉になっていない背景複雑化した事情があるからです。

  • そもそも業務が変化していた
  • 目的が曖昧なまま走ってしまっていた
  • チーム間で情報共有ができていなかった

こうした“構造の歪み”に気づけるかどうかで、対応の質は大きく変わります。

「言われたこと」だけに反応するのではなく、
「なぜ言われたのか?」を一緒に考える姿勢が、現場との信頼を生む。

本質に向き合うことは、時にしんどい作業かもしれません。
ですが、そこで逃げずに向き合う人こそが、システムを通じて業務を変えることができる人だと私は思います。

システム開発や運用は、技術だけではなく、人と人との信頼の上に成り立っています。だからこそ、システム担当者こそ「現場に寄り添いながら構造を見抜く目」を持っていてほしい。
それが結果として、「より使いやすい現場」につながっていくはずです。

まとめ:システムの「使いにくさ」は、問いのチャンス

「使いにくい」と言われたとき、あなたはどう反応しますか?

落ち込む前に、自分を責める前に、ぜひ思い出してほしいことがあります。
それは、“使いにくさ”の裏には、変化した業務や複雑化した現場があるかもしれないという視点です。

システムはあくまで手段であり、目的ではありません。
だからこそ、「何のための業務か?」「どういう流れが最適か?」といった原点に立ち返ることが、最良の改善につながります。

「誰が悪いか」ではなく、「何が起きているのか」に目を向けよう。

そうすることで、現場の信頼も回復し、真の意味での“使いやすさ”を追求することができます。
そして、その姿勢こそが、今後ますます変化していく業務環境の中で、システムを活かし続けるカギになるのです。

あなたの気づきが、現場の未来を変えるかもしれません。
だからこそ、目の前のフィードバックに対して、一歩深く問いを持つ力を大切にしていきましょう。

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